2013/08/31

支援法基本方針案に関する声明を市民会議から発表しました。


きょう復興大臣から発表された、復興大臣からの原発事故子ども・被災者支援法、基本方針に関する発表に対して、市民会議から発表された共同声明です。


子ども全国ネットとしても、名前を連ねていますので、ぜひ内容をご覧ください。

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【共同声明】
 被災者の声なきままの基本方針案は手続き違反
 既存施策の寄せ集めはもうたくさん

本日、復興庁は、「原発事故子ども・被災者生活支援法」実施のための基本方針について、福島県内の33市町村[1]を「支援対象地域」に指定し、個々の施策ごとに「準支援地域」とするという案を発表しました。9月13日までパブリック・コメント(一般からの意見聴取)に付すとのことです。

基本方針案には、切実な状況に置かれている被災者の声や、苦労しながら被災者支援を継続している民間団体や市民の声が一切反映されていません。また、たった2週間のパブリック・コメント期間はあまりに短すぎ、形式的です。

発表された基本方針案には多くの問題があります。「支援対象地域」は狭すぎる上、これに対応した具体的施策はなく、意味がありません。「準支援対象地域」は既存の政策の適用地域を呼び換えただけで、まやかしです。

もり込まれている施策のほとんどが、今年3月に復興庁が公表した被災者支援パッケージと同様、既存の施策の寄せ集めになっています。「帰還」を促すような施策が目につく一方、避難者向けの具体的な施策が欠落しています。さらに、健康分野では、放射線に関する「安心キャンペーン」ともとれる施策が並び、市民が切実に求めていた、幅広い疾病の可能性に対応した健診の拡充は含まれていません。

「放射性物質が広く拡散していること、当該放射性物質による放射線が人の健康に及ぼす危険について科学的に十分に解明されていないこと」を踏まえ、被災者一人ひとりが、居住・避難・帰還のいずれを選択した場合においても、選択を自らの意思によって行うことができるよう保障するという原発事故子ども・被災者支援法の目的や理念は無視されています。

現段階で判明した問題点、および若干の評価できる点をまとめました。

◆問題点


1.基本方針案に被災者の声を実質的に反映すべき。公聴会を開催すべき


原発事故子ども・被災者支援法第5条では、基本方針に居住者・避難者の声を反映させると規定されています。
しかし、現在までのところ、復興庁は自ら居住者・避難者の意見をきき、基本方針に反映させるための公聴会などを実施していません。これは手続き違反といっても過言ではありません。
復興庁は、基本方針案の公開後に、パブリック・コメント期間を設けるとしています。しかしそれでは遅く、被災者の声が実質的に基本方針に反映されません。
基本方針案の策定の段階から、福島県内外の居住者・避難者の意見を丁寧にききとるための公聴会を複数回開催し、基本方針案に反映するべきです。

2.無視された「一定の基準」/狭すぎる支援対象地域

原発事故子ども・被災者支援法第八条第一項では、「一定の基準」以上の地域を支援対象地域とすることを規定していますが、これは無視されてしまっています。
また、支援対象地域が福島県内33市町村にとどまることは、狭すぎます。さらに、支援対象地域に対応した具体的な支援策が見当たらず、設定した意味がありません。

私たちは、少なくとも追加線量年1mSv以上の地域を支援対象地域にすべきだということを訴えてきました。これは、国際的な基準および国内的な法令が、一般人の被ばく限度を1mSvとしていることに基づきます。
低線量被ばくの健康影響に関しては、閾値なしの線形モデル(すなわち、これ以下では影響がないという値がなく、線量に応じた影響を仮定すべき)が国際的に最も広く採用されていることを考えれば、一般人の被ばく限度として用いられている年1mSv基準を堅持すべきです。
なお、チェルノブイリ法では、年間1~5mSvの地域(内部被ばく含む)を「避難の権利ゾーン」として、居住者・避難者に幅広い支援を行っています。

3.実体のない「支援対象地域」とまやかしの「準支援地域」

「支援対象地域」からの居住者・避難者・帰還者がどのような支援を受けられるのかが書いていません。すなわち、「支援対象地域」には実体がありません。

さらに、今回打ち出された「準支援対象地域」はまやかしです。既存の政策を貼り合わせ、それぞれの政策の対象地域を「準支援対象地域」と名付けただけです。いわば、「幅広く支援している」ことを装うために作り出した新たな用語です。

4.過大評価されている個人線量計による個人被ばく把握

この基本方針で施策として掲げられている「個人線量計による外部被ばくの把握」は、これにより、「場の線量」を蔑ろにすることにつながり、注意が必要です。また、言うまでもなくこれは被ばく低減措置ではありません。

「きめ細やかな個人線量把握を行うため、避難指示解除準区域等において外部被ばく測定を一層促進」となっていますが、本来、個人線量計をつけることは、やむをえず高い線量の場所に入るときの被ばく管理のためのはずです。

現実には、「場」の線量が下がりきらないうちの帰還を許す口実とされてしまっています。

5.「避難」に対する新規施策が欠落

原発事故子ども・被災者支援法の第一条(目的)、第二条(理念)に書かれているとおり「放射性物質が広く拡散していること、当該放射性物質による放射線が人の健康に及ぼす危険について科学的に十分に解明されていないこと」を踏まえ、被災者一人ひとりが、居住・避難・帰還のいずれを選択した場合においても、選択を自らの意思によって行うことができるよう保障すべきです。

しかし、この「基本方針」では、「避難」に関する新規施策が欠落しています。

高速道路の無料化はすでに実施されている施策です。また、対象は福島県の中通り・浜通りまたは宮城県の丸森町に居住していた避難者のうち、原発事故により避難して二重生活を強いられている母子避難者に限定されています。

借上げ住宅の供与期間を平成27年3月まで延長することが書かれていますが、これはすでに決まっていたことであり、新規施策ではありません。

また、就労支援策の拡充として、「避難者が多い地域における就労支援の強化を検討」としていますが、これは対象は「政府指示の避難区域からの避難者」となっている上、地域全体の一般的な就労支援施策強化となっています。

6.色濃い「帰還」促進政策

現在、国や県の早期帰還政策が進められており、この基本方針にもそれが色濃く表れています。たとえば、「就業の支援」では、「福島県からの避難者に対し、地元への帰還就職が円滑に進むよう」支援を行う「福島避難者帰還等就業支援事業」が設けられていますが、逆に、県外への避難者に対して、同等の事業が行われているわけではありません。

7.県外の「健康管理調査」は「有識者会議」による検討だけ?

基本方針の「概要」には「福島県外で健康管理調査」と実施されていますが、実際には「有識者会議」を行い検討するのみです。
現在、多くの市民や専門家によって指摘されている、「甲状腺癌」や「心の健康」「生活習慣病」以外の、放射線被ばくの影響に鑑みた血液検査や心電図なども含む健診については、言及されていません。

◆評価できる点

下記の点は評価できる点です。しかし、被災者がおかれている深刻な状況に十分対応したものとはいえません。

・ 「民間団体を活用した被災者支援の拡充」:福島から県外に避難した被災者に対する情報提供や相談対応などの支援を、NPOなどの民間団体を活用して新たに実施
・ 「自然体験の拡充」:県外にも拡充
・ 福島県において甲状腺検査が継続的に着実に実施できるよう、検査スタッフの確保、育成を支援



[1]福島県中通りの福島市、二本松市、伊達市、本宮市、桑折町、国見町、川俣町、大玉村、郡山市、須賀川市、田村市(一部)、鏡石町、天栄村、石川町、玉川村、平田村、浅川町、古殿町、三春町、小野町、白河市、西郷村、泉崎村、中島村、矢吹町、棚倉町、矢祭町、塙町、鮫川村と、浜通りの相馬市、南相馬市(一部)、新地町、いわき市の33の市町村。

国際環境NGO FoE Japan
放射能からこどもを守ろう関東ネット
こども東葛ネット
会津放射能情報センター
福島老朽原発を考える会(フクロウの会)
子どものための平和と環境アドボカシー
内部被曝から子どもを守る会・関西
那須野が原の放射能汚染を考える住民の会
ハイロアクション福島
福島原発30 キロ圏ひとの会
ふくしま月あかりの会
福島避難者子ども健康相談会
鎌ヶ谷市放射能対策市民の会
放射能汚染から子どもを守ろう@守谷
福島原発震災情報連絡センター
子どもたちを放射能から守る全国ネットワーク
NPO 法人福島の子どもたち香川へおいでプロジェクト
白井子どもの放射線問題を考える会
松戸市PTA 問題研究会
子どもの未来を守ろう@うしく
風下の会福島
3a!郡山
子どもたちを放射能から守ろう三郷SCRMisato
グリーンピース・ジャパン
放射能汚染から子どもたちを守る会・野田
環境とエネルギー・柏の会
我孫子の子どもたちを放射能汚染から守る会
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