2014/08/25

被曝検査、一から議論へ 子の甲状腺、過剰批判で/(朝日新聞・福島県版より)


 全県民を対象に原発事故の被曝(ひばく)による影響を調べる県民健康調査の検討委員会は24日、検査のあり方を一から議論し直し、県に対する提言をまとめることを決めた。子どもの甲状腺の検査が一巡し、過剰な診断との批判が出ていることなどがきっかけだ。

 「検討委員会としての責務を果たすために検査のあり方を議論したい」。座長の星北斗・県医師会常任理事はこう切り出した。

 とくに議論になったのは、甲状腺検査の目的は何かという根本的な問題だった。国立がん研究センターの津金昌一郎がん予防・検診研究センター長は「何の症状もない子たちを検査する不利益も考えなければいけない」と問題提起した。

 2011年秋に始まった検査は、チェルノブイリ事故で子どもの甲状腺がんが増えた教訓を踏まえ、原発事故当時18歳以下の県民約37万人が対象だ。当初の目的は「子どもの健康を長期的に見守る」だった。この日公表された一巡目の調査結果によると、検査を受けた約30万人のうち104人が疑いも含めて甲状腺がんと診断された。

 しかし、甲状腺がんは成長が比較的ゆっくりで、胃や大腸がんなどとは異なり、早期の発見・治療が死亡率の減少にはつながらず、検査が「健康を守る」とは限らない。逆に、不安や、必ずしも必要ない治療など不利益をもたらす場合もある。このため最近、「過剰な診断だ」との批判も出ている。

 検討委では、被曝の影響の解明を目的にするかどうかでも議論が分かれた。

 「原発事故は世界史的な意味をもつ。健康への影響を明らかにするのは調査の大きな目的の一つであるべきだ。県民の関心もそこにある」(清水修二・福島大特任教授)など被曝と甲状腺がんの因果関係を解明する必要性を強調する意見が出た一方、「(因果関係を探る)疫学的データは付随して出てくるもの。主目的になってはならない」(稲葉俊哉・広島大原爆放射線医科学研究所長)、「甲状腺がんに一例一例対応して子どもの健康を守るのが第一で、疫学調査と並立させるのは難しい」(清水一雄・日本医科大名誉教授)との反論も出た。

 因果関係の解明には、検査の枠組みを見直す必要がある。子どもの甲状腺の被曝線量をある程度解明するか、事故の影響がない県外の子どもたちの検査と福島の検査を比較するかの二通りの方法が考えられる。しかし、現在はどちらも行われていない。

 検討委では今後、甲状腺だけでなく全県民の被曝線量を把握する基礎調査も含め、あり方を一から議論していく。

2014年8月25日
朝日新聞より
http://www.asahi.com/articles/ASG8S6FPCG8SUGTB012.html

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