2014/10/07

被ばく者支援の実情、ウクライナと日本で大きな格差 都内で勉強会



東電原発事故にともなう被ばく者の支援に役立てるため、チェルノブイリ原発事故後のウクライナでの事例に学ぶ勉強会が2日、都内で行われた。ウクライナを取材した独立メディア「アワープラネット・ティービー」の白石草代表は「現地ではチェルノブイリ法の下、被災者に対する保養と健診を実施することに異論はない」と話した。(オルタナ編集委員=斉藤円華)

白石氏は2013年11月、および14年6月にウクライナを訪問。チェルノブイリ原発から140キロの場所にあるコロステン市の健診施設や、被災者の保養を統括するキエフの社会政策省保養庁などを取材した。

ウクライナでは被ばくした子供の健診のための指針をまとめ、医師らに配布している。

チェルノブイリ法は、原発事故被災者の避難や生活、医療の支援を目的として、ソ連崩壊直前の1991年に成立した。同法は、事故による汚染地域を年間被ばく量によって4つのゾーンに区分。この内、最も汚染が低い第4ゾーン(放射能管理強化ゾーン)の線量は年間0.5~1ミリシーベルトだ。これにより、実に213万人が被災者として登録されている。

白石氏は「日本政府は報告書で『健康被害はなく、チェルノブイリ法は間違い』と評価しているが、正確ではない」と指摘。「ウクライナでは、チェルノブイリ法に批判的な人にも、被災者に医療や保養を保障する必要性が共有されている」とした。

一例として白石氏は、「国家戦略研究所」のオレグ・ナスビット研究員の証言を挙げた。ナスビット氏は白石氏の取材に「(年間被ばく量が)1ミリ以下の地域の住民に補償が支払われているのは問題」とする一方、「チェルノブイリ法による規制は必要だ。子どもの健康管理や給食、保養は絶対必要だ」と話したという。

その上で白石氏は、現地では被災者の治療と経済的支援を目的としたデータベースが整備され、登録者数が238万人に上る事を指摘。登録は被災者自身による申告制で、「この制度により被災者は『国に守られている』という安心感を得ている」と話した。

日本では原発事故子ども・被災者支援法が制定され、放射線量が一定基準を上回る地域の住民、およびその地域からの避難者を被災者と規定している。ところが、2013年10月に閣議決定された基本方針では、支援対象地域は一般人の年間被ばく許容限度である1ミリシーベルトを基準とせず、福島県の一部自治体に限定した。

白石氏は「ウクライナの汚染地域では子どもの健康レベルが非常に悪く、第4ゾーンでも同様だ。日本でも被災者を幅広く支援できる枠組みが必要だ」と訴えた。

NPO「いわき放射能市民測定室 たらちね」の鈴木薫事務局長は、「支援法により子どもの保養に補助金が給付されるようになったが、福島県内の保養団体が県に登録された旅行会社を通じてしか申請できず、しかも認められるのは1団体につき年1回のみ。手続きが非常に面倒だ」と話した。
勉強会を主催した「福島原発震災情報連絡センター」の佐藤和良・福島県いわき市議は「国策で東電原発事故が起きた。国家賠償として被災者支援を行うべき。しかし支援法は実質的には骨抜きとなっている」と述べた。

8日には参議院議員会館で、被災者の住宅支援と健康調査に関するシンポジウムと政府交渉が予定されている。

オルタナ
2014年10月7日


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