2015/12/20

被災の子らへ保養施設 北海道の酪農家

2015年12月20日 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20151220/k00/00m/040/095000c

北海道豊富町の酪農家、久世薫嗣(くせ・しげつぐ)さん(71)が、東京電力福島第1原発事故で被災し、転地保養を希望する子どもたちを受け入れる施設づくりを進めている。来春の開設を目指しており、町内の空き家を活用し、自炊や農作業をしながら共同生活してもらう「自給のむらプロジェクト」を計画。久世さんは「大自然の中で自給自足の生活を経験して、自分たちで生きる力を開花させてほしい」と意気込む。

久世さんは岡山県出身。1989年に豊富町に移住し、仲間とこだわりの生乳を使ったチーズやアイスクリームなどを製造・販売する「工房レティエ」を設立して人気となった。

久世さんは自然と共存する農村の重要性を発信する一方、隣接する幌延町で浮上した高レベル放射性廃棄物関連施設の反対運動に参加。旧ソ連のチェルノブイリ原発事故で被災した子どもたちの保養も受け入れた。今は近隣の酪農家などでつくる反対運動の住民団体の代表委員を務めている。

昨年、大腸がんで4回手術したが回復。「自分にはやり残したことがある」と今回の計画を発案した。現在は購入した空き家を改築中で、パンの焼き窯やかまどを備えた厨房(ちゅうぼう)、食堂も整備する予定。

受け入れ開始後は、豊かな自然の中で農作業体験などを通して1〜3週間、ゆったりとした共同生活を送り、体調を回復してもらう。支援するボランティアのスタッフ約10人とともに、農作業や大工仕事、まきを使った自炊や暖房など、過去に自ら経験した自給自足の生活についても伝えていくという。

久世さんは「原発災害は欲望のまま豊かさと便利さを求めてきた結果だ。子どもたちには農作業などを通じ、本当に大切なものは何かを感じとってもらいたい」と話す。【横田信行】

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